「地名の話」 ①地名の誕生

投稿日
執筆者
布施克彦
掲載元
ミニだより120号

藤沢地名の会ということなので、「地名」についての知識や情報を、会員のみなさまとできるだけ共有したいと思います。これからしばらく、地名にまつわる短文を、「地名の話」と題してミニだよりに連載してまいります。私は学者や専門家ではないので、根拠の薄い思いつきもためらいなく書いていくので、いろいろとご意見をいただければと思います。

特定の土地・地域の名前である地名は、いつ頃からあったのか。定説はないけれど、学者の間では、人が定住生活を初めてから地名ができたという説が有力だそうです。果たして、そうなのでしょうか。

定住生活を始める前、人が生活の糧を求めて移動生活をしていた頃は、地名が存在しなかったのか?そうとも言えないと思います。

「ここは今一つ獲物が取れないなあ。前いたところに戻ろうよ」

「前いたところってどこだ?あの川のそばか?」

「あの川だと?違うよ、池があって木がいっぱい生えてところだよ」

「ええっ?それってどこだっけ」

…みたいな会話にならないように、人が移動生活を続けていた頃から、特定の場所に特定の名前が付けられていたはずです。人類が誕生して、何らかの社会生活を始めたときから、地名はあったと思います。生活圏が固定化、さらには拡大してゆくにつれ、生活のために訪れる場所の特定を、コミュニティで共有する必要が高まっていったと思います。

その頃の人々が抱いていた、世界観を想像してみましょう。まずは、日々寝起きする住まいとそれらが寄り添う集落があり、その周辺には人為の及ぶ土地があり、さらにその外側に人為の及ばない異界が広がる。住まいは「ウチ」、それが集まる「ムラ」、その周辺部には生活の糧を得る「ハラ」や「ノ」や「モリ」があり、その向こうは人為の及ばない異界が「ヤマ」や「ウミ」として広がっていたと想像します。当時の人々の世界観を構成するこれらの言葉がいつ生まれたかは分かりませんが、相当昔からあったはずです。

地名はまず、人々の生活に必要な場所を特定するために付けられていきました。自然界を成す原、野、川、山、谷、沢、海岸、そしてその土地の植生や出没する動物の名などを添えて、限定範囲をもって地名として切り取られ、さらに集落の数が増えるに応じて、集落にもそれぞれの名が付けられていったと思います。

そして地名は、その数や種類がどんどんと増えていきます。その展開については、次に書きたいと思います。

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